
社員の育成について考える際に、多くの経営者が頭を悩ませるのは「どうやってモチベーションを上げるか」ということではないでしょうか。
- 社員のモチベーションが低く、仕事が受け身になっている
- 商品・サービスのクオリティに影響がでるため、もっと仕事に身を入れて取り組んで欲しい
- モチベーションが常に高く保ってくれれば、会社の成長を見込むことができるのに…
そういった悩みを抱える経営者は本当に多いです。
そもそも経営者は自分が立ち上げたか、先代から引き継いだ使命感をもっていたり、経営や仕事をすることに対してのモチベーションは高く保たれていることが多いです。
ですので、そうではない人、モチベーションが低いまま働く人の気持ちがわからないのではないでしょうか。
モチベーションには大きく2種類ある
そのあたりを理解するためにはまず、
「モチベーションには大きく2種類ある」ということを知りましょう。
それは、
- 外発的動機づけ
- 内発的動機づけ
の2種類です。
外発的動機づけとは
目標を達成したら与えられる報酬、つまりインセンティブを目的としたモチベーションのこと。
予算を達成したらボーナスが与えられるなど、多くの会社が採用している動機づけです。
内発的動機づけとは
それをやっていること自体が目的となるようなモチベーションのこと。
好きだから、楽しいから、没頭できるから、といった表現になる。
仕事というよりは趣味を手掛けているときに発生する動機づけ。
最近では「モチベーションを上げたり維持したりするには、内発的動機づけが必要だ」ということがよく言われています。
しかし、いざ運用するとなると内発的動機づけを活かすことは難しく、なかなかうまくいかないことが多いのです。
その理由とは
- その人がどんな内発的動機づけを持っているのか、本人ですらもあまりよくわかっていないため、会社として採用しにくいから
- もしわかったとしても、趣味や娯楽としてなら通用するが、仕事として通用しないと考えられているから
好きなことの要素を分解する
例えば、ある人の好きなこと、楽しいこと、没頭できることが「ゲームをしているとき」だとしましょう。
もちろんこのままだとただのゲーマーになってしまい、仕事に活かすことは難しいと考えられます。
しかし、本人にいくらヒアリングしても「ゲームをしているときが一番没頭できるんです」としか返事が返ってきません。
その場合必要なことは、「ゲームをしているとき」という要素を分解してみることです。
たとえば「すべてのジャンルのゲームで没頭できるのか」と聞いてみます。
そうすると、「RPG(ロールプレイングゲーム)はあまり好きではないけど、格闘技系は没頭できる」といった回答が得られたりするんです。
次に「すべての格闘技系ゲームで没頭できるのか」と聞いてみます。
「自分で見つけ出した連続技が出せるようになったりするのも嬉しいし、ただ勝負をするだけでなく、主人公が成長したり、話の展開がおもしろかったりするとのめり込んでしまう」 ということががわかります、
このように「すべてにおいて当てはまるのかどうか」という質問をすると、
当てはまる場合とそうでない場合を回答しやすくなります。
そして、そのふたつの違いを明確にしていくと、その人がどんなときに没頭できるのかが徐々に浮き彫りになってきます。
先ほどの例でいうと、
- 自分のスキルやできることが増える、ということが楽しい
- 単調なものではなく、ストーリーがあると楽しい
といったことが見えてくるのではないでしょうか。
こういったことは、普段あまり自覚をしていないか、当たり前だと思い込んでいるため敢えて言う必要はない、と思ってしまうことが多いのです。
ですので、ただ単に「何が好き?」と聞いても答えにくくなってしまいます。
具体的な質問や、比較できるように聞いてみることで、相手が答えやすくなりますので、ぜひ試してみてください。
分解した要素を、身につけたいスキルと組み合わせる
ではここで、社員の内発的動機づけが、先ほどの例の通り、
- 自分のスキルやできることが増える、ということが楽しい
- 単調なものではなく、ストーリーがあると楽しい
ということだったとします。
ここまできたらあとは簡単で、その要素を仕事に盛り込むことができればいいわけです。
なぜそれが難しいと感じるかというと、「仕事は楽しんではいけない」という考え方があるかもしれません。
仕事とは辛く苦しいものであり、それを乗り越えた先に喜びや成長がある、という価値観が根幹にあれば、仕事を楽しむなんてことは考えられないでしょう。
しかし、どんな分野でも一流の人は、自分自身の仕事を楽しんでやっているものです。
楽しいことが既に用意されているというよりは、目の前の仕事をどうすれば楽しむことができるのか、という主体性があるように感じるのです。
その主体性を発揮するための要素こそが、内発的動機づけではないでしょうか。
「仕事を楽しむ」という価値観を持つことこそが、モチベーションを上げて維持するための秘訣です。
さて、先ほどの社員をどのように内発的動機づけするかというと、
まずは身に付けたいスキルを洗い出してもらいます。
- プレゼン力を上げて、受注率を高めたい
- 資料作成力を上げて、1回で通るような企画書を作りたい
- 会計力を上げて、ビジネス数字に強くなりたい
そういったニーズが出てくるとします。
「プレゼン力を上げて、新規開拓をどんどんできるようになりたいんですよね。今のお客さんを大切にするだけではなく、うちの価値をもっとたくさんの人に届けたい。そのためには僕がプレゼン力を高めることによって、魅力を伝える役割として成長したいんです。」
こういった言葉を引き出すことができたら、分解して出てきた要素である
「自分のスキルを高めること」と「成長するストーリーを描くこと」が達成できるわけです。
更に、具体的な目標を設定し、高めるためのプロセスを考えてもらいます。
そしてそのために必要なことも具体的に洗い出してもらいます。
「そのためには、プレゼンの動画を1日3本は観ます。特に感情が揺さぶられるような、世界を変えたリーダーの動画を中心に観ます。」
「そして、まずはそれを完璧に話すことができるよう、繰り返し練習します。話している内容、間の取り方、表情や姿勢も真似してみます。」
「そうすると、なぜこの人のプレゼンはこんなにも魅力的なのか、ということが体感できるようになると思うので、その要素を自分のプレゼンに盛り込んでみます。」
こういったことは、この人にとっては楽しく取り組むことができることでしょう。
なぜなら、
- 自分のスキルやできることが増える、ということが楽しい
- 単調なものではなく、ストーリーがあると楽しい
のであり、それはゲームに没頭しているときと同じ効果が得られるからです。
そうすればその社員は内発的動機づけにより、自発的に成長することで自然と価値を提供するようになります。
内発的動機づけを見つけ出す環境づくりは、コミュニケーションから生まれる
モチベーションを上げて維持するための秘訣は、会社や上司が与えるインセンティブ、つまり「外発的動機づけ」ではなく、その人自身が勝手に動いてしまうような「内発的動機づけ」をいかに見つけ出すことができるかどうかにかかっていると言えるでしょう。
自ら内発的動機づけを見つけ出すことができる方は非常に少ないです。
適切なコミュニケーション、質問をすることで、
相手から言葉を引き出し、自らプロセスを考えてもらいましょう。
その人が楽しむ要素を具体的に洗い出し、それを仕事中にも発揮してもらう。
そういった環境を作ることができたら、「社員のモチベーション低下に悩む」時間は大きく減少します。