
集客とは手当たり次第に人を集めることではなく、自社の商品・サービスを提供したいお客さんを集めることです。
そのために欠かせないのが、お客さん像を明確にするためのペルソナ設定。ペルソナという言葉は知っていても、自社のマーケティングに活用できていないという方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、理想のお客さんを集めるためにペルソナが必要な理由と、ペルソナを設定するメリットを解説します。記事後半ではペルソナの作り方を紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
この記事の目次
ペルソナとは? ペルソナを設定する理由とメリット
ペルソナとは、自社の商品やサービスを購入してくれる理想的な架空のお客さんのことを指します。マーケティング戦略において、ターゲットとするお客さんを明確にすることは非常に重要です。
最近では、ブログやオウンドメディアなどを使ったコンテンツマーケティングでよく聞く言葉ですが、企業が商品やサービスを開発する上でも、ペルソナを設定することは重要な要素です。
ペルソナ設定が必要な理由
ペルソナを設定する場合は、ターゲットとなる人物の年齢、性別、家族構成、住所、学歴、出身などのハードデータはもちろん、個人の価値観や考え方、1日の過ごし方など、詳細な人物像を想像して具体的に描写することがポイントです。
具体的な描写が必要な理由を理解するために、具体性に欠けるペルソナ設定の例を1つ挙げてみましょう。
例えば、「30代の働く女性」という設定。
一口に「30代の働く女性」といっても、いわゆるキャリアウーマンと呼ばれるタイプの女性から、子育てを中心に働くパートの女性、介護のために自宅で無理のない働き方をしている女性など、さまざまな価値観の女性が存在するはずです。
そのため属性が同じだからという理由で同じメッセージを送ってしまうと、ある人には響き、ある人には全く響かないという現象が起きます。
つまり、年齢や性別などの大きなくくりでは、お客さんが本当に欲しているものが見えてこない、ということです。
似たような属性の見込み客をグループ分けすることを「ターゲティング」といいますが、ペルソナはそれよりもさらに細かく絞り込む必要があります。
ライフスタイルや価値観に至るまで、詳細にパーソナライズした絞り込みを行い、よりピンポイントにターゲティングしたものだけを「ペルソナ」と呼ぶことができます。
ペルソナを設定するメリット
ペルソナの設定には、2つのメリットがあります。
「顧客の視点」が想像しやすくなる
お客さんの細かい行動パターンや思考まで分析することで、「このお客さんなら、こんな購買行動をとるのでは?」という予測が立てやすくなり、マーケティングの効果も高まります。
マーケティングでは、競合と比較したときに、自社の差別化をどう図るかが重要です。差別化は、付き合うお客さんを絞ることで明確に見えてきます。つまり、ペルソナを作ることは、自社の差別化にもつながるということなのです。
設定したペルソナの行動パターンや趣味嗜好から、
「こういう商品・サービスを求めているのではないか?」
「こういった悩みがあるのでは?」
など、お客さんの頭の中から逆算していくイメージで商品やサービスについて考えることによって、ペルソナのニーズを満たす魅力的な商品・サービスを作り出すことができます。
認識のズレが起きにくい
ペルソナの設定には、社内における部署間で生まれがちな“認識のずれ”を減らすメリットもあります。
漠然としたペルソナしかない場合は、営業部と商品開発部のそれぞれで想像するターゲットが異なる可能性もあり、商品コンセプトや方向性がずれてしまうことも珍しくありません。そうした一貫性のズレがお客さんにとっては違和感となり、結果として商品・サービスが売れないといった事態を招くことになります。
これは、すべてのビジネスで起こる可能性があります。無駄なコストをかけないようにするためにも、ペルソナとして詳細に人物像を設定し、全員の共通認識としておく必要があるのです。
ペルソナ設定で気をつけるべきポイント
ペルソナの設定で気をつけなくてはいけないのは、あまりに現実離れした、自社に都合の良い人物像を作り上げないことです。
そのためにも、今までの顧客データなどから、現実にありそうな人物像を作り上げることをおすすめします。可能であれば、実際のお客さんにインタビューやアンケートに協力してもらい、そこからモデルケースとして作り上げるという手段は有効です。
自分たちで設定した理想のお客さんであるペルソナだけが満足する、商品・サービスを開発していくことによって、魅力的な商品・サービスが生み出されます。それが、同じ価値観を持った他のユーザーへの共感にもつながり、結果として売上につながるのです。
3つのステップでできる、ペルソナの作り方
ペルソナを作る理由とメリットを理解できたと思いますので、実際にペルソナを作ってみましょう。ここでは3つのステップでペルソナを作る方法を紹介していますので、内容を確認しながら一緒に作ってみてください。
【STEP1】付き合いたくないお客さんを洗い出す
まずは、「付き合いたくないお客さん」をイメージしてください。付き合いたくないお客さんを明確にすることで、「本当に付き合いたいお客さん」が見えてきます。
つまり、理想的なお客さん(=ペルソナ)は、付き合いたくないお客さんの反対側にいるということです。
理想的なお客さんを想像することは非常に難しいのですが、苦手なお客さん、お付き合いしたくないお客さんなら簡単ではないでしょうか?
今までのお客さんの中で、「付き合いたくない」「継続してお取引したくない」というお客を3~5社ピックアップしましょう(B to Cなど、個人を対象にしている事業の場合は、会社ではなく人でお考え下さい)。
そして共通点を出せるだけ書き出していくと、付き合いたくないお客さんが見えてきます。
例えば、以下を一例として挙げておきます。
- 値引き要請が激しい(一度決まった価格から更に値引き要請がある)
- 自分で全く考えずに、お客だからと傲慢に要求ばかりしてくる
- 言葉遣いが乱暴で、命令口調
- 毎月の支払いが遅れる
「付き合いたくないお客さん」とは、自分たちではお役に立てるかわからないお客さんです。
付き合いたくないお客さんに時間やリソースを注ぐのではなく、自分たちが真にお役に立てるお客さんに全力で貢献する方が、結果としてお客さんに喜ばれるビジネスができます。
ここでは思い切って、自分の付き合いたくないお客さんを書き出してみてください。
【STEP2】付き合いたいお客さんを明確にする
付き合いたくないお客さんが分かったら、次は「付き合いたいお客さん」を明確にします。想像でも良いですが、既にビジネスをされている方であれば、以下のような取引先をピックアップしてください。
- 今お付き合いしているお客さんで、今後もお付き合いしたいお客さん(3~5社)
- 利益率が高く、継続的にお付き合いできそうなお客さん(3~5社)
ピックアップができたら共通点を書き出し、お客さんが考えていることを集めてみてください。
- 彼らが悩んでいること
- 不安に思うこと
- 恐怖に感じていること
- 1年後に目指す姿
ポイントは、お客さんが普段使っている言葉で書き出すこと。もっとも良い方法は、お客さんにヒアリングやインタビューすることです。ライフスタイルや、行動に対する価値観や信念など、ペルソナを設定する上で必要な情報を聞き出していきます。
お客さんに直接インタビューすることが難しいようであれば、アンケートに回答してもらう方法でも良いでしょう。アンケート回答者には特典を用意するなど、インセンティブをつけることで答えを引き出しやすくなります。
他には、お客さんと接する営業メンバーにヒアリングを行うという手段もあります。可能な限り多くのデータを得ることで、より明確な人物像を作り上げることができます。ここで重要なのは、リアリティーのあるペルソナを作成することです。
完全に想像だけで作り上げてしまうと失敗します。過去の顧客情報なども分析しながら、ペルソナを作りましょう。顧客の声を集めると事例としても活用できますので、ぜひ挑戦してみてください。
【STEP3】データを使ってペルソナを具体化させる
付き合いたいお客さんへのインタビューからペルソナの骨格ができたら、最後はペルソナを具体化します。
ステップ1と2で集めた情報の質が、リアリティーのあるペルソナを作れるかどうかの鍵。集めた情報をABCの3つに分けて書き出し、ペルソナを具体化していきます。
A.ペルソナの基本情報(デモグラフィック)と特徴
基本情報は詳細に設定します。家族構成や仕事、年収などは消費動向に影響を与えるので、欠かせません。
また、ペルソナに具体名(架空の名前)を入れ、イメージに近い写真も用意しましょう。写真を見ながら想像することで、リアリティーが増していきます。さらに特徴を加えていくと、イメージを具体化させていくことができます。
A.基本情報と特徴 | |
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基本情報 | 特徴 |
・架空の名前 ・写真(インターネットで検索して探す) ・年齢 ・性別 ・住所 ・家族構成 ・学歴 ・会社業界 ・役職 ・仕事内容 ・年収 など |
・外見的な特徴 ・話し方 ・好きなもの/苦手なもの ・スキルや特技 |
B.ペルソナの考えと感情(ニーズとウォンツ)
思考パターンや悩みは、その人の行動や動機付けに大きく影響を与えます。
「人は感情で物を買い、理屈で正当化する」という言葉は、マーケティングではよく用いられる表現。「なぜその商品を買うのか」「なぜそういう決断をしたのか」を知ることがとても重要ということです。
悩みや恐怖、必要としているものなどペルソナの感情を把握できてこそ、購買行動へとつなげることができます。
仕事とプライベートについて、具体的にお客さんを想像しながら、お客さんの言葉で書き出してみて下さい。
B.感情・思考(仕事/プライベート) |
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・抱えている問題 ・問題解決のために実行したこと ・直近1年間の目標 ・感じている悩みや不安 ・誰にも言っていないが、密かに考えていること など |
C.仕事やプライベートでの具体的なエピソード
Bで書き出した情報をもとに想像できるエピソードや将来の夢、目標などを書き加えます。ここで書き出した内容は、性格や思考パターン、悩みなどを推測する上で重要な要素となります。
「この人なら職場でこんなことがあったのではないか」「学生時代にこんなエピソードがありそうだ」などといった内容は、性格や思考パターンが決まっていれば想像しやすいと思います。
また、将来の目標を設定することで、それに到達するために必要なものも見えてきます。将来の目標によって、購買行動や考え方、ライフスタイルも変わってくるはずです。
具体的なエピソード(仕事/プライベート) |
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・学生時代のエピソード ・職場でのエピソード ・3年後の目標 ・5年後の目標 ・10年後の目標 ・将来の叶えたい夢 |
ここまで書き出していくと、「この人物ならこういう行動をする」「この人物ならこの場面ではこういう発言をする」といったように、行動パターンや思考パターンが浮かびあがってきます。
当然、家族構成、仕事、年収などによって消費パターンは異なります。ライフスタイルや趣味、思考パターンによっても消費行動は千差万別です。
ペルソナが何を考え、何を求めて商品を購入するのか。それを見極めるために、時間をかけて考察して下さい。
ペルソナは、たった一人に絞って大丈夫なのか?
ペルソナを詳細に設定していくと、「本当に一人に絞ってしまって大丈夫なのか?」「他の人が反応しなくなってしまうのではないか?」と、心配になったのではないでしょうか?
しかし、心配はまったく必要ありません。
たとえぺルソナをたった一人に絞ったとしても、同じような価値観を持っている人は数多く存在します。
もし納得がいかない場合は、自分がイチお客さんになった気持ちで、自分の悩みや相談したいことについて、Yahoo!の知恵袋やGoogleなどで検索してみてください。
どんなに個人的な悩みであっても、同じような悩みを抱えている人が意外とたくさんいるということに驚かされるはずです。
ぼんやりとした内容よりも、具体的な呼びかけに反応する
例えば、「男性(女性)の皆さん!」というフレーズ。あなたは自分のことだと感じますか?
それでは、「最近、疲れているな…と感じる独身男性(女性)の皆さん!」ではいかがでしょう?
もしくは、「最近、残業続きで疲れているな…と感じる独身30代男性(女性)のあなた!」では?
最初のフレーズよりも目を引くのではないでしょうか?
具体的になればなるほど、自分事として捉えるようになるはずです。
たったひとりに絞り込むことで発信するメッセージが明確になり、反応率を上げることも可能になります。パーソナライズされた呼びかけの方が、人の心を惹きつける力があるのです。
たった一人に向けたメッセージ、たった一人のために開発した商品が、同じ価値観を持った人々に共感を与えるということを覚えておきましょう。
また、ペルソナを一人に絞ってしまうことで、そのニーズに対して深く掘り下げた商品を開発することができます。
「そのペルソナの悩みを解決する方法はこれしかない!」
「この商品が発売されたら、ペルソナは絶対買うよね!」
というものを作ることで、商品の質も上がります。
言い換えると、対象が漠然としているときには満足度の低い商品しか出来上がりません。魅力的な商品・サービスを作り上げるためにも、ペルソナはたった一人に絞り込むことが必要なのです。
ペルソナマーケティングは、集客方法もメッセージ内容もペルソナから決める
こうして作成したペルソナに向けて集客活動を行えば、ストレスなくビジネスを行えるようになります。
- 普段ペルソナが見ている、使っているメディア(媒体)は何か?
- どういったメッセージを届けると反応するか?
メッセージや集客の方法も、ペルソナを意識することで明確になります。ぜひ時間を取ってペルソナを作ってみて下さい。ペルソナを作成することによって、ターゲットの顧客像が共通認識として明確化され、商品開発時のズレがなくなります。
また、思考パターンや行動原理、ライフスタイルなどの詳細な情報を与えることによって、将来の行動パターンや購買動向を予測しやすくなり、集客に向けたメッセージを魅力的なものにすることができるのです。
メッセージはペルソナごとに変わる
ペルソナは複数あっても、問題ありません。違うコンセプトの商品・サービスを開発するためには、複数のペルソナが必要なケースも出てくるでしょう。
しかし、1つのメッセージを複数に発信してはいけません。なぜなら、せっかく絞った意味がなくなってしまうからです。
複数のペルソナに向けてメッセージを作ってしまっては、従来のマス・マーケティングの手法と変わりません。パーソナルなマーケットに変化してきたからこそ活きるのが、ペルソナマーケティングです。
せっかく作り上げたペルソナの使い方を間違わないように、「1つのペルソナ、1つのメッセージ」というルールに注意しながら、集客活動を行うようにしてください。